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〜街角ドキュメンタリー〜
素人名言劇場

【素人名言_ドキュメントNo.6】
名前:野路光男さん/26歳
インタビュー日時:2018年2月、夕方4時ごろ
インタビュー場所:六本木 

同じ柄の紙袋をさげながら道ばたで談笑する正装の集団から、一人離れて喫煙所で煙草を吸っていた男性を直撃。角刈り風のいかつい髪型や鋭く刻まれた眉間のシワ、がっちりとした体躯は一見怖そうな印象を与える。だが眼鏡の奥の優しい眼差しと、時おり見せるくしゃっとした笑顔は、どこか元小結・高見盛(現・振分親方)に似た物腰のやわらかな人でした。


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◎今日は今まで何をしていたのですか?
大学時代の友人の結婚式でした。この日のために、はるばる田舎から上京してきました。学校を卒業してからまだ2年しか経っていないのですが、会場でみんなの顔を見た途端に泣きそうになりました。


◎当時の彼女さんとも久々に再会したとか?
いやいや……(笑)。お恥ずかしい話、学生時代にそういうことは一切無かったので、ほぼ男友達と旧交を温めただけですね。


◎よく上京するのですか?
いえ、上京するのも学生のとき以来なので4年ぶりです。大学が一橋だったので当時は国立に住んでいました。今は地元の市役所の地域課に勤務しています。学生時代は地域に関することを専攻していたわけではなく、とりあえず地元で公務員になるっていうことが目的だったので、たまたまですね。あと家から職場まで徒歩10分なので、おそらくそういった立地条件のこともあり配属されたのだと思います(笑)。


◎一橋大学を出て職場は市役所なんてエリートですしモテそうじゃないですか。
それがからっきしだめで(笑)。職場にはほとんど男性しかいませんから期待できないですね。たまに合コンもあるにはありますが、仕事と少し繋がりのある人が多いので、わりと顔見知りだったりするんですよね。もちろんそれがだめということもないのですが。理想のタイプはよく笑う人。芸能人だと鈴木奈々さんみたいな女性がいいです。まあ、でもそんな贅沢も言ってられないんですけどね(笑)。


◎エリート街道まっしぐらという感じですし、親御さんも鼻高々なんじゃないすか?
そうですね。そこだけが唯一の救いといいますか、自分でも親孝行ができたかなとは思います。市役所勤務は、近所からの印象もすごく良いですからね。でもそれだけ周囲から信頼や期待をされているのに、自分では今の仕事にあまり納得ができていないんです。


◎それはどういう意味ですか?
正直、今の仕事があまり楽しくないんですよね。仕事なんてそんなものと言われてしまえばそうなんでしょうけど。学生時代は、とにかく公務員になることだけを考えていたこともあって必死でしたが、いざ実際に公務員になって作業に従事してみるとどこか違和感があるといいますか。



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◎今の仕事を辞めることも考えているのですか?
実は辞めようという気持ちが少しあって、できれば大学に行き直したいと思っています。


◎それはまたなぜ?
高校のときに私は大病をわずらったのですが、素晴らしいお医者さんに出会って完治することができたんですね。その経験から、うっすらと医者という仕事に興味を抱いておりまして、その気持ちが今でもどこか心に刺さっていて……。実際、今から受験勉強をして医学部に通うというのはどうなんだろうとか色々考えてしまいます。

就職して最初のうちは、とりあえず7年間は働こうと思っていたんです。7年間働けばそれなりに考えも固まってきているでしょうし、貯蓄もできて、入学資金や学費にあてられるかなって思って。でも仕事を初めてたった2年で、医者になることへの思いが爆発しかけているんですよね。


◎公務員ならではの安定した生活を手放すのも、かなり勇気がいりますよね。
そう、そこなんですよね。これからずっと市役所で働いていれば、普通に出世もして結婚もして子供も生まれたりして、幸せな生活を営んでいくのだと思います。でも続けていくうちに、何かおもしろくないと思ってしまうと思うんです、今もうすでに納得できていない部分がありますから。医者になるにはすごい大変だと思うけど、すごい楽しいと思うんですよね。やり甲斐もあるだろうし。

◎でも大学進学を考えていた高校時代は、ご両親と相談をされたんですよね?そのときは医者になりたい気持ちがあることは伝えなかったのですか?
伝えました。といっても当時の私は、医学部ではなく獣医学部に行きたかったんです。祖父が獣医だったせいもあり、おじいちゃんっ子だった私ものその影響で自然と獣医に惹かれて。

でもそんなじいちゃんの息子である私の父は、仕事ばかりのじいちゃんに育てられたのですが、当時獣医の仕事が忙しすぎて、子供の頃に全く遊んでもらった記憶がないみたいで、もし将来、僕が獣医になって自分に子供ができたときに、忙しすぎると子供がかわいそうだから獣医になるのだけは絶対にだめと、半ば強引に言われてしまったんです。

もちろん父の気持ちもわからなくはないですが、高校時代に進学先を選ぶ際、最終的に「獣医学部に進学をするなら金を出さない」って言われて。それで一橋に進学を決めました。そういういきさつもあって、実はうちは兄も含めて家族全員が公務員なんですよ。



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◎議論しなかったことを後悔していますか?
していますね(笑)。ちゃんとそのときに、自分が納得のできる議論ができていたら、今ごろは獣医になっていたかもしれない。獣医じゃなくても、製薬会社で働くとか、それに付随した仕事をしていたかもしれないし、選択の幅が広がっていたと思うんですよね。でも中途半端に進学をしたことで、今みたいに悩むことになってしまって。

あ、中途半端にっていうのも失礼ですけど。今の父は、私が公務員になったことで凄く喜んではいますが、私が医者になりたいと思っていることは知りません。


◎野路さんは今、いわば人生の岐路に立っているわけですね。
公務員を辞めて、医者になるために受験勉強を始めようと思っています。

来年から6年間かけて医学部に通うとして卒業するときは32歳。それから実技など、医者として必要なさまざまなことを経験してようやく医者として独り立ちができるかなという感じなので、早くてもちゃんとした医者になれるのは40歳くらいからだと思うんです。

それを考えたらうかうかしていられません。地元に戻ったらまず「医者になるから公務員を辞める」と、父親に真っ先に宣言したいと思います。ただ正直、自分の中ではまだちょっと迷いがありますが、もう二度と同じような後悔をしたくないので、ここはしっかりをケリをつけたいと思います。



名言

「親であれ大事なことはとことん議論し、自分の意思を貫くべき」


同じ後悔をしないために安定した生活を捨てて、今後は自身の夢に向かって動き出す決意をした野路さん。野路さんと同じように、過去のしがらみから長年に渡って、ずっと心の奥にトゲが刺さっている人も少なくないはず。野路さんと同様、それが刺さったままで自然に消えないいつか必ず抜かなければいけないトゲなら、処置は早い方がいいのかもしれません。

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