〜街角ドキュメンタリー〜
素人名言劇場
【素人名言_ドキュメントNo.9】
名前:亀和田 咲さん/31歳(女性)
インタビュー日時:2018年1月某日、夕方5時ごろ
インタビュー場所:上野
「上野に来るのはかなり久しぶりで迷ってしまいました(笑)」。と、ひとなつっこい笑顔で語る亀和田咲(仮名)さん。いつもは道ばたやお店などで偶然出会った人にインタビューをさせていただく本企画だが、彼女の場合は特別。ホームページを見て、悩みごとがあるのでインタビューをしてほしいと自ら直接連絡をくれたのです。
そんな亀和田さんが悩みを告白。どこにでもありそうな恋愛話にはじまり、最終的には愛らしいルックスからは想像もつかないようなことを告白してくれました。今回は前後編、2回に分けてお届けします。
◎お仕事は何をされているんですか?
IT企業でプランナーをやっているんですが、給料がクソ安いんです。ものすごく働いているのに、ぜんぜんもらえていないですよね。でもここを辞めてもほかに行くところもないので、もうずっと働くしかないんです。レールに乗った人生ですよ(笑)。社会人あるあるだと思うんですが、ここにきて自分が何をしたいのかわからなくなってきちゃって。26歳のときに大学の同級生だった今の旦那と結婚をして、子供もいます。
◎まあ苦労はそれなりに誰でもあると思えば、何か幸せそうな感じですけどね。
もちろん幸せっちゃ幸せなんですけど、最近ちょっとプライベートで悩みができてしまって。というのも会社で好きな人ができちゃったんです。
◎あら。それは問題ですね。どんな人なんですか?
厳密にいうとその人は同じ会社の人ではなくフリーの方です。今、同じプロジェクトに携わっている人で。昨年末に上司のひと言で、遅くまで残っている人間でカラオケに行こうってなって、それを機に仲良くなったんですが、年があけてから急速に仲良しになって。うちの会社の決まりで全員チャットに入っているんですが、最近はつねに石毛さん(仮名)とチャットをしています。仕事しろよっていう感じですよね(笑)。
◎向こうは亀和田さんの気持ちを知っているんですか?
知っています。ここがまたすごい面倒なところで、私が感情を隠すのがめちゃくちゃ下手くそなんです(笑)。さらにいうと、うちの旦那もそのことを知っているんです。
◎えっ!? それはさすがにヤバくないですか?
ですよね…(笑)。私と石毛さんと、石毛さんの回りでもともと私が仲良かった人もいるんですけど、仕事が遅くなったらみんなで一緒に帰ったり、あと麻雀が好きで、土曜日の夕方に私の家に集合して麻雀をやったりするようになったんです。子供の夕飯とかはもう終わっているので、旦那に寝かせ付けをお願いして、朝の7時くらいまで麻雀大会っていう(笑)。
◎なんか大学生みたいですね(笑)。その間、ずっと旦那さんは家にいるわけですよね?
いますいます。過去3回やっていて、1回目のときは気にならなかったらしいんですけど、2回目以降からお酒を飲みつつやっていたんですけど、子供を寝かしつけ終わって隣で麻雀の様子を見ていた旦那が私に「石毛さんに対してなんか声が甘くなってる。絶対に好きだよね?」って言われて。私はまったく気づかなかったんですけど(笑)
◎旦那さん的には、どんな気持ちなんでしょうね。
離婚したいのかっていわれると、彼は多分したくないんだと思います。私も離婚したいわけではないです、ただ石毛さんのことは確実に好きは好きなんです。
◎石毛さんは、亀和田さんの気持ちを知っていて何と言ってるんですか?
「(亀和田さんは)旦那さんがいるから付き合えない」って。
◎まあそりゃあそうですよね。
あと石毛さんって、もともと人間が好きじゃないっていうんです。私が石毛さんの頭をなでなですることとか、意味もなくつんつんって袖とか引っぱっちゃったりしていちゃいちゃすることに対して「それはお付き合いしている人たちがやることであって、僕らは友達同士だからダメ」って言うんですけど、それをするとすっごく楽しそうにしてくれるんです。基本的にチャットでも、話しかけてくるのは向こうだし。
◎石毛さんも本当は亀和田さんのことが好きなんじゃないですか?
どうなんですかね。私にはよく「自分(自分=石毛さん)のことが好きって丸わかりな行動を起こしちゃだめだよ」とか言ってますね。でも、みんなで麻雀をしているときに、私がほかの男性とかにテーブルの下でキックとかしたりすると焼きもちも焼くんですよ。そのときに「私のことが好きなの?」って聞くんですけど「別に」って。なんか言っていることが矛盾しているんです(笑)。
私にはアニメで好きなキャラがいるんですけど、それをUFOキャッチャーで取ってきてくれたり、あとこれがほしいっていうとわざわざ取ってきてくれる。別にっていうわりには意外と色々してくれるんです。
◎ 亀和田さんも離婚もする気がないのに「好き?」って聞いちゃだめじゃないですか?
ただまあ、その話にのってくる石毛さんもどうかと思いますけど。
たしかにそうですよね(笑)。今の旦那って、旦那から私のことを好きになってくれたんです。私が大学生のときにつきあっていた人が二股をかけてて、裏切られて泣いているところに現れたのが学校の後輩だった今の旦那で、そこから付き合い始めたんです。
サークルが一緒だったから趣味も合いますし、今までつきあっていた彼氏は私から好きになって告白してつきあうという流れだったので、旦那は初めてのパターンで。私はすごい熱をあげて好きっていう感じではないけど、普通に生活を営んでいくうえではこれでいいんだみたいな。すごい居心地が良くてちょうど良いんです。向こうが私のことを好きだから、大抵のわがままは通りますし。
でも最近、旦那がすごいさみしそうな顔をするんですよ。私が石毛さんのことを考えていて、ふっと上の空になる瞬間があるみたいで、そのたびに旦那が「(亀和田さんが)ここにいない感じする」って。「別の男のことを考えていてもいいけど、息子のこともちゃんと愛してあげてね」とか、「人妻なんだし、向こう(石毛さん)も人妻にかまってって言われたら迷惑だからほどほどにね。ただ本当に好きなら先のことも考えなきゃね」とかっていうだけで怒らないです。
昨日も私のために焼肉に連れて行ってくれたり、私が大好きなクッキー屋さんにわざわざ早朝から並んで買ってきてくれたり、本当に優しいんですよね。さっきも言いましたが、旦那が別に嫌いなわけじゃないですし、子供もかわいいし。この生活に何の不満もないのに、私は何を求めているんだろうって自分でも思います。
◎改めて聞きますけど、そんな旦那をと別れて石毛さんと一緒になることはあり得ないんですよね?
あり得ないですね。
◎じゃあ石毛さんがかわいそうじゃないですか。お話をうかがっていると、口では亀和田さんに対して気持ちは無いって言っていますが、実際石毛さんは、亀和田さんのことは大好きだと思いますよ。
そうなんですよね。でも石毛さんと遊ぶのはめっちゃ好きだし…。一回"石毛さん離れ"をするって宣言したことがあるんです。それをチャットで石毛さんに言ったら、そのあとすごい険しい顔をしてて。「怒った?」って聞いたら「別に」ってまた不機嫌になっちゃって。結局"石毛さん離れ”できませんでした(笑)。私、メンヘラちゃんですよね。
◎メンヘラかどうかはともかくずるいですよ(笑)。結局一番得をしてるのは亀和田さんじゃないですか。自分だけみんなから好き好きって言われていい気分に浸っているだけで、ほかの人の気持ちを考えてないわけだから。ただでも、それでもほかの男二人はいいって言っているんだから、それでいいんじゃないですか。石毛さんは報われなくてもいい、旦那も好きなら別れてもいいって言っている。 正直、当事者が全員変わっていて私には理解できないですけど。
少なくとも、石毛さんが傷つかないうちに何か手を打つべきだと思います。ただもう亀和田さんのことが好きだろうから、遅いかもしれないですけどね。
たしかにそうですね。ずるいな私(笑)。うーん、でも石毛さんや回りの友達みんなから「かわいいね」って言われたいんですよねー(笑)。
冗談とも本気ともとれるふわふわとしながら、終始笑顔で話してくれた亀和田さん。これは人間の性とでもいいましょうか。結婚をしていようが彼氏(彼女)がいようが、周囲からかわいく(もしくはかっこよく)見られたいという気持ちは人間なら誰しもあるものかもしれません。
でも話を聞いていて感じたのは、亀和田さんの抱く気持ちの病的なまでの真剣さ。夫がいながら、周囲に対してどうしてここまで愛情を求めるのかすごい不思議でした。そしてその疑問をぶつけてみると、意外な答えが返ってきました。後編に続きます。