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〜街角ドキュメンタリー〜
素人名言劇場

【素人名言_ドキュメントNo.11】
名前:岩田さおりさん/27歳
インタビュー日時:2018年3月
インタビュー場所:池袋


(前半までのあらすじ)
おっさんレンタルを介して岩田さんという美人と知り合った私。「一緒にウェディングドレスを選んでほしい」というオーダーを受けてドレスを選びました。そしてその後、一杯飲みませんかという誘いを受け居酒屋に。最初は岩田さんから溢れでる幸せトークに耳を傾けていたのですが……。



街角ドキュメンタリー


一杯だけという話しでしたが、気づけば入店してすでに1時間以上経過していました。私が岩田さんから衝撃的な事実を知らされたのは、二人ともビールとハイボールを4~5杯ずつくらい飲んでいい感じに酔い始めたときでした。その瞬間は突然訪れました。

「実は離婚するんです、私」

岩田さんが先ほどまでと同じテンションで話したことと、私が少し酔っていたこと、さらに店内が喧騒に包まれていたこともあり最初は何を言っているのかよくわからなかった、というかあまり聞こえませんでした。

「え、何ですか?」私は左耳を岩田さんの方に向けながら上半身を傾け、ちゃんと聞こえるように体勢を整えました。

「だから、離婚するんです」

その言葉を聞き、改めて体勢を正対し直しました。岩田さんは私の顔を大真面目な表情でじっと見つめています。「何言ってるんですかこれから結婚をする人が。そもそもまだ結婚式だってまだ挙げてないじゃないですか」

私は飲みの席での冗句だと思い真剣に取り合いませんでした。そりゃそうでしょう。だってさっきまでウェディングドレスを選んでいた人なんですから。するとその直後、真剣な眼差しでこちらを見つめる岩田さんの左目からすーっと、一筋の涙が溢れ出たので余計に混乱しました。

「えっ、どうしたんですか。岩田さんもしかして泣き上戸ですか?」私はその時もまだ彼女の言葉を信じていませんでした。すると、表情を変えずに涙を流したまま「ですから結婚式を挙げたらすぐに離婚するんです」と言いました。

さっきまでウェディングドレスの試着をしていた人が離婚するってどういうことなのか、今いち言っている意味がわかりませんでした。ですがその直後、堰を切ったようにわんわんと泣き出した彼女を見て、ようやくこれがただごとではないということがわかりました。

10分ほど泣いたでしょうか。「何かすみません、変なことになっちゃって。メイクもぼろぼろだあ」と、無理に笑顔を作ってごまかす姿が、なんだかいじらしかったです。ちゃんと話せる状態になるのを無言で待っていると「すみませんでした、もう大丈夫です」と言いました。そして岩田さんは、大きく鼻をすするとゆっくりと語り始めました。


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「実は彼、さっき話した学生時代に付き合っていた年上の人と結婚をするっていうんです。彼女は、彼から紹介されたこともあって、私も何度か会ったことがある女性なんです。サバサバしていて、いかにも仕事ができそうなかっこいい人で。別れた後も、二人は連絡を取りあっていました。あまり良い気はしませんでしたけど「腐れ縁だし、もう男女っていう感じでもないから」って二人とも言っていたので、私もあまり気にしないようにはしていました」

「それがどうして今の状況に?」当たり前ですがそれを聞いてもまだ離婚するということと、その二人の関係がどう繋がるのか理解できていなかったので、素朴な疑問をぶつけてみました。

「二人の勤務先が同じ丸の内ということもあって、よく二人で会っていたんです。彼はすごく真面目な人なので、彼女と会う時は必ず私に連絡をくれていました。そして二人で会う理由というのが、毎回彼女のメンタルカウンセリングみたいな感じなんですよ。彼女は一見するとすごく社交的で華のある、人が集まってきそうなタイプの人なんですけど、もともとすごく繊細な性格みたいで昔から精神的に病んでしまうことが多かったそうなんです。

急に連絡が取れなくなって、電話にも出ないしラインやメールをしても折り返しがないっていうことが頻繁にあったらしくて。そうなると優しい彼はすごく心配してしまうんですよね。しかも、もともと嫌いで別れたわけでなく、むしろ彼の方が好きだったようなので余計ですよね。学生時代に付き合っているときからずっと、くっついたり離れたりっていうのを繰り返していたみたいで。そしてつい2週間前に大事な話があるって呼び出されて『やっぱり彼女のことが好きだから別れてほしい。あいつには俺がいなきゃだめなんだ』って」。

「もちろん絶対に嫌だって言いました。だって彼がいなきゃだめなのは私だって同じですから。でも彼は『本当にごめん』っていうばかりで。ただ『お願いだから結婚式だけはやらせてほしい。ただ式を挙げてしばらくしたら離婚してほしい。もちろんそのためのお金は全部自分が出すから』って」。

私は部外者ですが酔っていたこともあり、身勝手な彼にちょっと腹が立って「だったら式なんてやらないって言えばいいじゃないですか」と強めに言いました。

すると岩田さんは「彼のお祖母さんの体調が良くないらしく、このタイミングを逃したら二度と晴れ姿を見せられないかもしれないから。どうしても頼む」って。彼の言い分はむちゃくちゃだし、勝手だということはわかるんですけど、今まで優しくしてもらった彼にそこまで言われてしまうと何だかいやとは言えず、あとお祖母様にも会ったことがあるだけに、余計に断りきれなくて。なんかバカみたいですよね、っていうかバカですよね私」

よく喋ったせいか、岩田さんはジョッキを手にし、ゆっくりとビールを飲み干してから再度注文をしました。そしてオーダーをした後、使い終わったおしぼりのビニールの細長い袋をかさかさといじりながら再び続けます。

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「彼のファッションセンスや料理好きな部分って、実はその年上の彼女の影響をモロに受けていて。私、彼女に会った時に思ったんです。着ているブランドとか好きなミュージシャンとか、彼が教えてくれたのと全て同じなんですよ。それって考え方によっては、私は彼女から色んなことを学んだっていうことにもなるわけじゃないですか。これからの人生、私が選ぶものには全て彼女の影響があると思うと、なんだか悔しくて」

私は、それはちょっと考えすぎなんじゃないかなと思いました。仮に、彼のセンスがその彼女の影響によるものなだとしても、岩田さんが彼女から直接教えてもらったわけではないわけで。「そもそも人間の個性なんて、今まで実際に会った人や見聞した何かからの影響で出来上がっているものだから、あまり気にしなくてもいいと思うんですけどね。それは無理矢理結婚をする理由にはならないんじゃないですか?」

すると岩田さんは「おっしゃる意味はわかります」というと、届いたばかりのジョッキに口をつけた後、また語ります。

「でも私はイヤなんです。離婚をすることが決まっているのになぜ今日、ドレスを選びに行ったのかも自分のセンスで選びたかったんです。これからはもう彼はいないので、その最初の一歩となる彼との結婚式では自分のセンスだけで決めたかったんです。最初は腹いせに高い衣装を選んでやれとか思っていたんですけどね」

それはプライドなのかなんなのかわかりませんが、そんなの必要あるんでしょうか。私は純粋に、岩田さんの言っている事が全く理解できませんでした。「本当にそれだけのために式を挙げるんですか? 結婚式で無駄な出費をして、3ヶ月後の式まで悶々とした日々を過ごすのはお互いにとって経済的にも時間的にも無駄なような気がしてならないです。いくらお祖母様のことがあるとはいえ、別れちゃえば他人じゃないですか。私ならさっさと縁を切って次に進もうと思いますけど」


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岩田さんは弱々しく笑顔を浮かべ俯いてしまいました。「そりゃ私だって、できるならそうしたいです」と言うと、ため息混じりに続けました。「やっぱり好きなんですよね彼のことが。諦めきれないんです。もしかしたら式までの3ヶ月の間に、彼が心変わりする可能性も無いわけじゃ無いじゃないですか」

「センス云々っていう話は言い訳という事ですか?」

「正直、自分でもよくわかりません。ただセンスのことは少なからず嫌だなっていう思いはあります。ただ彼のことが好きで、もう一度振り向いて欲しいという気持ちもあるんです。もうどうしたらいいんですかね、私」

好きという気持ちだけでそこまでやることが、やはり私には全くわかりませんでした。ただ、それを言ったらおしまいなんだろうなとも思ったので、それは言わず、ただじっと彼女の話を聞いていました。

「大沢さんごめんなさい。初対面なのにこんなに色々話しちゃって、しかも大泣きしちゃって。お店の人、引いてませんか?」と岩田さんは無理やり笑顔を見せるとトイレにたちました。数分後、トイレから戻って来るとメイクも直したようで元の岩田さんに戻っていました。ジョッキを一気に空にすると、岩田さんは「大泣きしたらだいぶ楽になりました。そろそろ出ますか」と言い、席を立ちました。

「割り勘にしましょう」と言う私の言葉を無理やり遮ってお会計を済ませると「じゃあ行きましょう!」と空(から)元気気味に言いました。駅までの道すがら、お互いにずっと無言でした。岩田さんは吹っ切れたように見えましたが完全復活という感じではなさそうで、表情からは何を考えているのか読み取れませんでした。そして駅の改札口に到着すると「また何かあったら連絡させていただきますね」とちょっと疲れた感じの笑顔で言い、足早に雑踏の中に消えて行きました。





あれから岩田さんとは連絡をとっていません。結婚式のことや彼のことなど、その後どうなったのか気になるところです。ただ「好き」というだけで、わざわざ結ばれる可能性の低い3ヶ月先の結婚式を挙げる気持ちは、私には今だに理解ができません。


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